いつも通りの日々
「ただいまー」
とりあえず挨拶。一人暮しなので挨拶を返してくれる人はいない。
けれど。
「にゃーお」
――返してくれる、猫ならいる。
私に向かって飛び込んでくるそいつを抱きとめ、撫でてやる。ふわふわとした、えも言われぬ触り心地。
こうしている時、私はつくづく思うのだ。猫アレルギーの人は本当にかわいそうだと。
「どう?今日は元気にしてた?」
「にゃー」
「この前みたいに机引っ掻いたりしてないよね?」
「にゃん」
――多分、言葉の意味は伝わっていないだろう。でも、私の気持ちはきっと伝わっているんじゃないかと思う。
こうしている時が一番幸せだ。
背中を撫でてやる。お腹をくすぐってやる。そうした時に返す反応の一つ一つが、全て愛おしい。
目を細めて、ゴロゴロと鳴いて――いつまでも戯れていたい。
ぷにぷにとした肉球を触り、爪を出し入れさせながら私は考える。この時間があるから、明日も元気に仕事に行ける。この子から元気をもらっている。
大切なのは、壮大な冒険譚でもなく、完全な成功でもなく、安心出来る日常なんだろうなあ。
ぎゅっと、暖かい熱の塊を抱きしめる。生命の熱だ。私と同じ熱だ。
嫌なことも、悲しいことも、全て忘れてしまおう。
「……おやすみ」
「にゃ」
私も、頑張ろう。
ふわふわの塊が、頑張れ、と言った気がした。
これからも、よろしくね。
*後書き
意外と最近のもの。
これは明るいですね。いや、意図的にいつもの暗い雰囲気から脱却しようとしたんですけど。
おかげで明るい比喩が思い浮かばなくて苦労しました。
ま、小説というのには拙く短い文章ですが、癒されていただけたら。
ちなみに私、動物は…好きでも嫌いでもないとか、そんな程度に好きです。。。
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